青パーカーの書き散らし

宗谷岬でまた会おう。旅の記憶と知識の記録。

カブC50E系の純正流用FI化 まとめ

前: カブC50E系の純正流用FI化#8 知見 - 青パーカーの書き散らし

今回は、このプロジェクトのまとめを記載します。

はじめに: 何がしたかったのか

このプロジェクトでは、スーパーカブ50/70/90系(多分CD90とかも可)のエンジンを極力純正パーツ流用でFI化することを目指しました。

その昔JA07に乗ってみて、シルキーさにビックリするとともに、パンチの無さに絶望したことが動機です。
当初の私はインジェクションが悪いんだ!と思っていたのですが、その後タイカブ Dream110(JA07と同じような2次クラッチのエンジンに燃料装置はキャブレター)に乗ってみるとまるで同じフィーリングで、この時初めてエンジン自体の特性だったことに気が付きます。

それで、エンジンは1次クラッチのままインジェクションに変えてしまったらどうなるんだ?と考えました。
純正品にも、JBH-AA01(AA02E)という一時クラッチでFIなエンジンがありますが、これはメーカーが出した第一世代のスーパーカブのインジェクションだから、たぶん熟成されていなかったり、燃費重視だったりしてフィーリングを犠牲にしているんだろうと思っています。JBH-AA01はかなりおとなしいフィーリングなんです。
なにより、チューニングパーツも補修用パーツも少ないので、好きにいじることができません。

以上が、古いカブのエンジンを自分でインジェクション化してみよう!という本プロジェクトのはじまりです。

詳しくは第一回の記事にも書いておりますので、そちらをご参照ください。

heliumu.hatenablog.jp

終結

当初の目論見1: 燃費を改善して長距離を走れるようになる
→ 燃費は改善しませんでした。詳しくは後述します。

当初の目論見2: パーツが豊富な旧カブをインジェクション化する
→ インジェクション化自体は完成し、エンジンにはセンサーを取り付ける、ジェネレータを交換する以外手を加えていないため目論見通りです。

当初の目論見3: 1次クラッチのフィーリングを楽しみながらのインジェクション化
→ 思いのほかピックアップのフィーリングが悪く、モッサリとしたものが完成してしまいました。JBH-AA01の純正よりも突っ掛える感じがひどく、アクセルにリニアに回らず後から回転がついてくる感じです。ENIGMAのデジタル加速ポンプも利用して急開時に薄くならないよう調整していますが変わらず。

必要な物品

最低限必要な物品を以下に記載いたします。
キモの部分はAA02E(FIの黒エンジン)のジェネレーターが12VC50E/AA01E/C70E/HA02E/HA03E(長いので以下C50系と記載)などと互換性があることです。これを利用することで、FI用のピックアップパルスが簡単に生成でき、パルサーを溶接するなどの手間がありません。

名称 解説
フレーム 12V50系のフレームが必要です。ラージケースはNG。
エンジン 12VC50E系のエンジンが必要です。6Vのエンジンは基本NG。クランク端がAA02Eのジェネレーターと互換性あるものであればOK。ただし、エコノパワー系6Vを利用する場合は12Vにしておくこと。中華エンジンとHA02Eで動くことを確認しました。
スロットルボディ スーパーカブの純正なら、どのスロットルボディでも利用可能なはず(最新のJA59EやJA65Eは詳しい素性を知らないですが)。私がつかったのはTAKEGAWAの24mm
インジェクター スロボに着くものならなんでもOK。JA07純正を利用しました。
ECU スロボとハーネスに依存。ハーネスが一致しているなら社外のフルコンなども利用可能。
スロットルワイヤー タイコ部分が合うならなんでもOK。今回はモンキー用を利用。
ハーネス FIのスーパーカブのハーネスを用意する。スロボとECUに依存。フレームの長さやセンサーに合わせて加工する。
フライホイールとジェネレータ 上述の通りこれがキモ。
ジェネレーターカバー AA02E用のジェネレーターカバーが必要です。
チェンジシャフト AA02E用のチェンジシャフトが必要です。ジェネレーターカバーがせり出すため。
燃料ポンプ 加圧力ができるだけECU/スロボの組み合わせと同じものを選定しましょう。
AA02E用なら300kPaが目安。
O2センサー ECUの組み合わせと同じO2センサーでOK。
JBH-AA01 リトルカブFIが36532-GBJ-M31、EBJ-JA10 クロスカブが36532-K90-V01。
油温センサー ECUの組み合わせと同じ油温センサーでOK。
燃料タンク 燃料タンクは2穴必要です。キャブのカブならリザーブ穴が利用できるため加工不要。
インジェクター専用コネクタ インジェクターは高圧力が加わるため専用のコネクタが必要。
ポンプとインジェクターに合うものであればOK。

やるならJBH-AA01ハーネス+同ECUの組み合わせが最も手軽です。しかし、サブコンの制約が高かったりするため、できればハーネスはEBJ(JA07などの110)や最新のものを利用したいところです。

110過渡期のカブのスロットルボディ(と付属のセンサー類)は50/110と互換性があり、これらのハーネスとECUを使っても問題ないと思います。ただし、ハーネスとECUは1対1である必要があります(加工すればその限りではありません)。

最近の熟成されたカブはセンサー類がどうなっているかわからないため、互換性は不明です。

 

また、あったほうが良いものとしては以下の物品があります。

名称 解説
LAFモニター セッティング時に必要。無くてもフィーリングでできる人は不要。
サブコン 排気量や圧縮比が異なるため基本必要なはず。純正の補正範囲でやりくりできるなら問題ないけれど、ECUは「補正範囲内です」なんて言ってくれないのでほぼ必須かな?

パーツナンバーなど、足りない情報があったら後で書き足します。

必要な知識(理論)

各回にそれぞれを記載しておりますので、#2〜#7までの記事をご参照ください。
個人的に不足している知識を補填するために調べたため、内容には偏りがあります。
(不足項目や知りたいことがあればコメントください。分かる範囲で追記します。)

#2 ECU
#3 エンジン/マニホールド
#4 ハーネス/ジェネレータ/ポンプ/O2センサ/タンク/油温センサ
#5 エンジン始動
#6 エンジン吹けないトラブルシュート
#7 セッティング/FI変換アダプタ
参考#8 知見

手順

1. ハーネス

事前に準備すること

  • FI用のハーネスをキャブ車に合うように加工する

以下手順

  1. メインハーネスを外す。
  2. 加工したFI用ハーネスを取り付ける。
アドバイス JBH-AA01用のハーネスにはバンク各センサがあります。 バンク角センサは、地面に垂直に近い角度で反応し、イグニッションを(もしくは点火か燃料を)カットするセンサのため、ハーネスに接続した状態でなるべく水平になるように固定しておくだけでOKです。 (確か、取り外すとエラーが出るか、転倒状態と認識されてエンジンが掛からないはずです) EBJ以降のカブにはバンク角センサはありません。

 

2. 燃料装置

事前に準備すること

  • 変換マニホールド(キャブ車のシリンダーヘッド対スロットルボディ用ラバーマニホールドの変換アダプタ)の作成
  • スロットルボディの加工(カブは不要。CD系はフレームと干渉するため)
  • インジェクターを排気量に合わせたものに交換する

CD系(CD50やCL50、CD90)に合わせてスロットルを加工する場合はこの記事を参照:
heliumu.hatenablog.jp

以下手順

  1. キャブ、マニホールドを取り外してストッロルボティーと交換する。
  2. スロットルボディにハーネスから出ている配線を取り付ける(2箇所)。
  3. スロットルボディにスロットルワイヤーを取り付け、スロットルが全開まで開閉できることを確認する。

3. タンク・配管

  1. 2穴タンクに交換する。キャブ車のスーパーカブはリターン経路があるためそのままでOK。
  2. 燃料ホースを取り付け、ポンプに配管する。ポンプは任意の場所へ固定する。
  3. 高圧用燃料ホースと専用コネクタを使い、インジェクターへ配管する。
高圧燃料ホースと専用コネクタについて コネクタは6.3mmと7.89mmのものがあります。 スーパーカブの純正パーツに使用されているのは6.3mmですが、アリエクで購入できる燃料ポンプは7.89mmのものだったりします。その場合は変換アダプタを自作しましょう。 参考 コネクタ 6.3mm(Amazon) コネクタ 7.89mm(Amazon) 高圧用燃料ホース(Amazon) ホース側はこのジョイントでコネクタを接続します

 

4. センサー類

  • キャブ車のエンジンに油温センサーを取り付ける
  • O2センサーを、なるべくシリンダーヘッドのエギゾーストに近い場所に取り付ける

各部配線する。

考察

大した考察は書けませんが...フィーリングが悪いことについて考察したいと思います。

キャブじゃなくてインジェクションだから、といってハチャメチャにフィーリングが悪くなることはないと思っています。FIのレーサーにも乗ったことがあるのですが、瞬発力はキャブと大差無かったです(もちろん、キマったキャブのほうが瞬発力は上だと思うので、"大差"無いとしています)。

同時に、モード切替ができるCBR250RR(MC51)を借りて乗ったことがあるのですが、コンフォートモードとスポーツモードでは、同じエンジンでもアクセルに対して回転数の変化の仕方がかなり違います。アレはバイワイヤなのでスロットルバルブを電子制御していますが...。

www.honda.co.jp

今回は、純正のECUとサブコンを使ったので、このコンピュータに原因があるんじゃないかと疑っています。演算能力が悪いのか、はたまたフィードバックの補正が悪いのか。
API TECHのフルコンが壊れなければ比較してみたかったですが...。

私個人としては、ECUのプログラムが燃費重視になっていて、ピックアップを殺しているのでは?と考えています。キャブでも負圧式とかあるくらいですしおすし(カブも歴代最強SCMやSDXが負圧式だったはず)。

どういった制御かは知るよしも無いですが、スロットルバルブは電制じゃないので、点火時期で抑えているのか、もしくは計算に移動平均などの技法を使っていて瞬間的な変化に追従しにくいのか...。

ただ、これは推定に推定を重ねた想像なので、あまり意味はありません。
やはり信頼できるのはデータなので、正しく問題解決するためにはロガーが必要になります。

昔、少しだけJSB1000マシン(CBR1000RR-R)のコンピュータを触っていました。 (燃料補正だけではなく、トラコンとか、横滑りとかも触れるHRC純正のレース専用コンピュータです) 自分の所属するチームは、途中でハルクのデータロガーを取り付けたので、あるとないとの違いはよく分かります。 あのときはメカニックしかやっていなかったので、ライダーの感覚で話をされてもよく分かりませんでした。でもロガーがあることで、メカニックたちだけではなくライダーも客観的に自分の走りを見れるので重宝しました。

 

おわりに

本プロジェクトでは、C50E系を簡単に(?)インジェクション化できることを実証しました。
その結果、インジェクション化キットなどが無い旧カブのインジェクション化領域に新しい道を開くことが出来たと思います。

従来はEBJ-JA系(JA07E、JA10E)へ載せ替えることが主流でしたが、フィーリングが気に入らなかったり、チューニングパーツがC50E系よりも少ないことがネックです。
JA系はJA系ですばらしいエンジンだと思いますが、私にはやはり、この無骨なエンジンが合っているようです。

けれど、純正流用にも限界があることも分かりました。
特に、今回私が採用したJBH-AA01のハーネスとECUを流用すると、フィーリングが悪い結果を生む可能性が高いです。
また、純正流用とは言いつつも、油温センサー取り付けやO2センサー取り付けのための加工が必要なため少々大変なところもマイナスポイントです。

このプロジェクトでPGM-FIに関する知識がついたので、今度は純正流用ではなく、完全なインジェクション化を目指したいと思います。

現在企画段階...ですが、カブが手元にないのでまずはそこからなんとかしなければですね。
ではまた。

すぺさるさんくす

八馬力さん
純正スロットルボデー、インジェクター類の物資ご支援、並びにまともに走らない時期にアドバイスを頂きました。

いつもありがとうございます!

しゃみじさん(@mcub4719)
空燃比計を物々交換で頂きました。
純正ナローバンドO2センサー用、KOSOのモニターです。
アリエクで手に入れたワイドバンドもあったのですが、うまく作動せず使えないところに船でした。

ありがとうございました。


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